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小笠原で野生化してしまったネコの保護と譲渡  小笠原諸島・御蔵島等自然環境保護活動事業 公益社団法人 東京都獣医師会 ベテリナリーアドプション内 特設ページ

概要説明

小笠原動物派遣診療報告

2008年より公益社団法人東京都獣医師会が実施している小笠原動物派遣診療について、
今年度実施した活動の一部を皆様にご紹介します。

小笠原ってどんなところ?

写真 小笠原諸島は東京都の一部です。都心から南に約1000㎞に位置し、本土から父島に向かう交通手段は週に一度の定期船「おがさわら丸」のみ、片道25.5時間の船旅となります。

小笠原の島々は今まで一度も大陸と繋がったことがない海洋島です。そのため小笠原の生き物は独自の環境で進化し、世界でもここでしか見られない生物(固有種)が多く存在します。そして2011年にはユネスコの世界自然遺産にも登録されました。

しかし、今まで外敵のいない環境で進化した動物たちは警戒心が薄く、人間によって持ち込まれたネコに対する防衛手段を持っていませんでした。「あかぽっぽ」と呼ばれる固有種「アカガシラカラスバト」は一時生息数が40羽ほどになり絶滅寸前まで追い込まれました。

そのころに撮影されたのが左の写真です。ネコがくわえているのは自分よりも大きいカツオドリという海鳥。ネコは優秀なハンターなのです。

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しまネコの引っ越し大作戦

写真 これをきっかけに山に住む野良猫たち(ノネコ)の捕獲が始まりました。

しかし、問題は捕獲したネコの行き先です。捕獲されたネコに新たに飼い主を見つけようとしても、小さな島の中では受け入れられる数は限られています。こうした行き場のないネコたちは殺処分されるしかないと考えられていました。そんな中、東京都獣医師会が受け入れに手をあげました。

「野生動物も、ネコも救おう」
こうして、しまネコの本土への引っ越しが可能になりました。現在までに412頭のネコが小笠原からはるばる船に揺られて本土へ到着し、そして新たな家族の元で幸せな生活を送っています。

これまでに、都内約140動物病院がネコたちを引き受け、里親さんに引き渡しています。小笠原のネコたちの里親になってくださった方々にこの場を借りてお礼申し上げます。

写真 捕獲されたノネコは本土の受け入れ先病院が決まるまでの間、この「ねこまち」と呼ばれる施設で暮らします。

現地の飼養スタッフは、まだ人に慣れていないネコたちに毎日声をかけ、島を離れるまで健康で過ごせるように愛情を掛けお世話をしています(実は、内地へ猫をお見送りするとき、寂しくなって毎回泣いてしまうそうです)。

写真

小笠原動物派遣診療

写真 「人とペットと野生動物の共存」にはネコの捕獲だけではなく島民の方々の協力が不可欠です。これ以上ノネコを増やさないためにも、地域の住民が責任を持ってネコを飼育できるような仕組みが必要です。小笠原村では1998年に全国初のネコの個体登録条例が制定されました。こういった取組みの中のひとつが派遣診療です。

父島には動物病院がないため、多くの患者さんがこの派遣診療に来ます。毎年この時期だけ、地域の交流センターが動物病院に変わり、健康診断・飼育登録・マイクロチップの挿入・不妊化手術などが行われています。

派遣診療の目的は“ペットの適正飼養を啓発すること”です。つまり、診察を通して「小笠原の固有種を守りながら、大切なペットとどのように付き合うかを患者さん自身に考えてもらうチャンス」としてこの事業は設けられています。

また、今後新たな外来種となり得る愛玩動物の適正終生飼養することを推進することも目的のひとつです。行政や地元のNPO法人と共に始められたこの事業も今年で7年目を迎えました。

野生動物復活の兆し

写真 2005年頃、生息数が40羽ほどと絶滅寸前だったアカガシラカラスバトは、山で暮らすネコを減らしたことにより、その生息数が200~300羽ほどまでに増加してきています。最近では集落地でも目撃されるようになりました。しかし、ネコの繁殖力は強く手を緩めればあっという間に元の状態に戻ってしまいます。

また、父島のノネコの推定生息頭数は2013年には10頭まで減少しましたが、母島にはまだ200頭弱もの個体が生息していると考えられています。来年度からは、母島での捕獲が本格化し、毎年50頭ほどの捕獲および受け入れが必要とされています。

動物ふれあい教室

写真 今年度も母島小学校1・2年生、父島小学校1年生を対象に動物ふれあい授業、父島中学校1年生対象に道徳の授業を実施しました。小笠原村では様々な事情(飼いネコ適正飼養条例や住宅事情など)によりペットを飼養する世帯が減少傾向にあります。

そういった中で学校飼育動物を通して、生き物への親しみをもち、愛情を持って世話をすることで他者に対する思いやり培うことを期待しています。

小笠原ネコに関する連絡会議(通称:ネコ連)

写真 このような活動は小笠原村と東京都獣医師会のみで行われているわけではありません。環境省、林野庁、東京都、NPO法人小笠原自然文化研究所など多くの組織が関わり成り立っています。

これらのメンバーで構成されたネコ連では「人とペットと野生動物が共存して暮らせる島づくり」の実現を目指し、各団体がどのようなことが出来るのか、皆で知恵を出し合っているのです。

最後に

写真 「小笠原のネコってどんなネコなの?普通のネコとちがうの?」と里親募集の看板をみて病院にたちよって下さる方、実際に里親になって下さった方々。みなさんにどんな経緯で小笠原のネコたちがはるばる遠い本土に来たのかを知ってもらいたいと思い、今回こういったかたちで小笠原事業の一部をご報告させて頂きました。

今この瞬間にも、ねこまちには新しい家族に迎えられるのを待つネコたちがたくさんいます。今後ともこの活動を暖かく見守り、ご支援頂ければ幸いです。最後まで読んで頂きありがとうございました。

平成26年12月25日
公益社団法人 東京都獣医師会